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セロ弾きのゴーシュ

2008.07.27 *Sun
宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」に白石准氏が作曲し、白石氏含む山猫合奏団が朗読したもののライブ録音。ライブならではのお客とのインタラクション(最初の口上という形で)まで収録。



私は正直言って原作ものにはあまり満足したことがない(特に原作が傑作の場合はなおさら)なのだが、このCDは例外的。どういったらいいもんか難しいのだが、原作を最大限尊重し、その完成度を個性によってペンキ塗りしてぶち壊しにすることなく、かえって原作の素晴らしさを際立たせている。ライナーノーツで藤崎氏が「白石は~(略)~賢治に問いかけているように思う。これで、いかがですか、と。」と述べているが、私はこれをこの作品の謙虚さを表現していると理解した(このライナーノーツがまた非常に独創的で必見である)。それでありながら、音楽の完成度が異様に高い。白石氏は作曲家の父を持ちながら、大学卒業後の一年を除いて作曲をきちんと学んだことがないそうで、作曲をする自分をアマチュアリズムと表現しているそうだが、それを真に受けるのならば、それゆえに、音楽のアカデミックな新規性や曲の構造などに頭を費やすことなく、賢治と対話し、エンターテイメントを作りあげることに集中できたのではないかと思う。と言ってもポピュラー音楽ではなく、近代クラシック音楽に慣れ親しんだ人の耳に心地よく音楽が鳴り響く。

原作の素晴らしさはあえて述べるまでもない。過去にオケに没頭した経験がある私には、冒頭の、指揮者がゴーシュを叱りつける場面は本当にいたたまれない。他の団員が、聞いていない振りをしてくれるような態度がまたたまらない気分になる。
しかし原作だけではうーんとは思ったものの、そのまま通り過ぎてしまったのだが、この音楽と一緒に聴いたとき、そこにはすごいリアリズムがあり、自分は完全にゴーシュと一体化して涙が出てしまったのである。その時にこの音楽は傑作なのだと確信した。私自身専門家ではないので、その程度の確度だけれども、こういう音楽付きの朗読ならいくらでも聴いてみたいと思う。

クラシック系の音楽は作品ができたらその後はみんなで演奏してそれぞれに育てていくものなので、この作品に関しても、いろいろな団体によって演奏されることが望ましいだろう。作曲家の演奏が一番の名演であるわけでもないように、山猫合奏団が演奏するものが絶対的なベストでもないかもしれないのでぜひ楽譜の出版を期待したい。ものすごく好きなだけに敢えて苦言を言わせていただくと、朗読はやはり個性が反映しやすく、私には語り手の個性の強さが原作の魅力をかき消しているように感じられるところがたまにあった。まあ人それぞれだと思うが、それなら人それぞれの表現ができる環境がほしいと思う。

例えば、私がかなり大嫌いな賢治作品の映像化としてアニメの「銀河鉄道の夜」がある。何で主人公が猫でなければいけないのか。音楽(細野晴臣)はあんなに素晴らしいのになぜ北十字があんなにしょぼいのか。なんで宇宙があんなに平面的なのか、等々、不満を上げればきりがない(といっても一部には絶賛されているらしい。わからんな…)

しかし、すでにオリジナルが傑作なものを他のメディアにするというのはそもそも難しいことなのだ。例えば面白い漫画をゲーム化すると全然面白くないようなことはよくある。もともと性質が全然違うものに同じ主題をもってきてもうまくいきそういないし、また原作が大好きな人はそれでもうおなかいっぱいになっているのに、それを変更したり別なものを加えたりしたらにごるのが普通である。まして、文学作品を映像にするなんてのは究極に難しい。映像はあまりに具体的すぎるのだ。文学は得られる情報が少ないからこそ多くの人に受け入れられ、それぞれに違った映像を思い描くことができるけど、そこに来て映像を見せられてしまうと、「これは違うっ!」と思うのが自然だ。それに抗して映像でも傑作にするのは並大抵ではない。

そういう意味で言うと、「セロ弾きのゴーシュ」に関しては、原作そのままで朗読し、もともと音楽付きの情景が文学で表現されるものに音楽をつけるわけだから、非常に有利な立場だとは言える。とはいえ、やはり原作を個性で汚さないように傑作音楽をつけるのは難しいことであることに変わりはなく、その点で大成功を収めているこのCDは誰にもお薦めできる作品である。(ただ、子供に聞かせたら、音量のダイナミックレンジが大きく、しゃべりで時々びっくりしていた笑)

1ファンとして、白石氏にはできれば以下の二点をぜひお願いしたい:

1. 「セロ弾きのゴーシュ」楽譜の出版
2. 「銀河鉄道の夜」の作曲、および楽譜出版(できればバイオリンパート付きで笑)。アニメの嫌なイメージを上書きしたい
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大和田 茂

Author:大和田 茂


元IT系の研究家。現在はゲーム/玩具作家をめざしている。


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